· 

ケビンさんと北海道

1.ケビン・スチュワートさんと北海道

 

(1)初代国際交流員(1987年~1989年) 

1988年、国際交流課を訪問したケビンさんの両親とともに。

 

 JETプログラムで来道したケビンさんの業務は当時の国際交流課にとり、すべてがパイオニア的な取り組みでした。来道要人への接遇、翻訳業務、道内AET(ALT)の連絡調整のほか、道内市町村からの要請に応じた講演や自治体交流のアドバイス、さらには道立高校への英語指導などを通じて全道を対象に活躍されました。特に、AETが少なかった当時、英語の授業で接したケビン先生の教え子は、今も道内に各地におられることでしょう。


 

(2)道庁総務部野球部員として 

 アメリカでも野球経験のあったケビンさんは、道庁総務部野球部に所属し、剛球投手として、またホームランバッターとして、“元祖二刀流”選手の実力を遺憾なく発揮しました。

 

 今も残る「平成元年度総務部野球部成績表」では、打率514厘で首位打者、安打18本のうちホームランが8本。当時の日本野球界の助っ人選手としては、巨人のウォーレン・クロマティに勝るとも劣らない貢献ぶりでした。


 

また、口ひげを蓄えた米国人助っ人の参上は、高倉 健の主演映画「ミスター・ベースボール」のトム・セレックを彷彿させつつも、当初は異なる日本の野球文化、特に早朝からの朝野球や軟式ボールの使用など、戸惑いを見せながらも長距離ヒッターとしての存在感は抜群でした。

  

ちなみにアメリカの大学を卒業する際にはMLB某チームの3Aチームから声がかかったとの話も本人から伺ったことがあります。(真偽のほどは定かではありませんが...。)


 

(3)帰国後のケビンさんと北海道(1989年~) 

 1990年の北海道とマサチューセッツ州の姉妹提携の調印後、ビジネス分野での交流進展を図るべく、秋山愛生舘㈱がボストンに現地法人 オータムヒルズ・インターナショナル(AHIC)を設立。社長の秋山孝二さんに請われてケビンさんがAHICの責任者に就任し、オレゴン州からボストン市に居を移しました。㈱秋山愛生舘及び1998年に合併した後は㈱スズケンの社員研修や海外出張などで多くの日本人社員がボストンを訪れ、世話役として公私に渡り尽力されたました。 

 

 またビジネスの傍らボランティアとしても、日米及び北海道とマ州と友好親善交流事業に積極的に取り組み、地元ボストン市の米日協会(Japan Society)の事務局長も務めていました。2004年には同協会より両国の親善交流事業へ長年の取り組みとその功績が讃えられ、ケビンさんに銀杯が授与されています。 

1990年以降は、出張で年に1、2回程来日しており、来札時には道庁時代の同僚ともと懇親を深めていました。


1993年8月、ボストン市にてマリア・バウテさんと結婚。なお、マリアさんはケビンさんと同時期に他県のAETとして日本に滞在した経験があり、マリアさん曰く、「日本を通じて知り合った」お二人はともに大の親日家です。

1995年2月にお二人はマ州から姉妹提携5周年記念訪問団員(ロバートソン・マ州教育長官ほか45名)として来道し、札幌雪まつりも視察されています。1997年10月、ケビンさんはAHICの社長に就任し、2000年にAHICの株を買い取り、オーナー社長となりました。


 

2.ケビンさんの逝去

 近年、頭痛に悩まされていたケビンさんは、2010年に一度、手術を受け回復されましたが、2011年の7月に不調を訴え市内の病院に入院しました。しかし、脳腫瘍の進行は止まることなく、ご家族との残された期間を共に過ごすべく自宅での療養を続けましたが、9月の下旬に容態が悪化し、地元のウースター市内のホスピスに入院、10月1日に多くの人に惜しまれつつ、帰らぬ人となりました。(享年50才)

 

3.「ケビンさんを偲ぶ会」の経緯

 

(1)発起人会の発足 

 ケビンさんの逝去は、2012年の正月明けに届いたスチュワート家からのクリスマスカードで知った方がほとんどでしたが、2011年7月以降のケビンさん体調の急変と入院、そして他界の情報はボストンの知人から秋山さんに伝えられ、ご自身のブログで経過なども紹介されていました。

 このブログの記事に共鳴した道庁時代の同僚2名(木元、森田)を加えた3名が発起人となり、2012年2月に「ケビンさんを偲ぶ会」開催に向けた発起人会を立ち上げました。

 

(2)「ありがとう、ケビン!」 - ケビンさんを偲ぶ会の開催 - 

2012年3月2日(金)18時30分よりホテル札幌ガーデンパレスにて、道庁旧国際交流課及び㈱スズケンの関係者を中心に40名の方にお集まりいただき、「ケビンさんを偲ぶ会」が開催されました。

急遽開催した集いでしたが、スズケン関係者は、道内はもとより名古屋や関東からもお越しいただきました。出張やプライベート旅行を通じて、米国でケビンさんにお世話になった方が多数おられたようで、改めてケビンさんを慕う方達の思いを強く感じる一時でした。また、参加者の思いをマリアさんご家族に伝えるため、「偲ぶ会」当日の映像を編集したビデオ(DVD)を制作しました。

 

(3)「ありがとう、ケビン!」 ~ ボストンへ ~

「偲ぶ会」終了後の3月下旬に秋山さんの知人である静岡県立大学の西田在賢(にしだざいけん)教授がボストンを訪問する機会があり、「ケビンさんを偲ぶ会」の写真や寄せ書き、さらに「平成元年度総務部野球部成績表」がご家族に手渡されました。 

スチュワート家は大のレッドソックス・ファンです。特に長男のAidan(エイダン)君が父譲りの野球少年で地元の野球チームに所属しています。そのエイダンくんが父親の道庁野球チームのユニフォーム姿の写真と打撃成績を見て感激したそうです。

同年7月に秋山さんが墓参のためボストンを訪問し、改めて「偲ぶ会」について説明しました。一方、マリアさんからは、「北海道の皆様へ」と米日協会よりケビンさんに授与された銀杯が秋山さんに託されました。

2007年 レッドソックス ワールドシリーズ制覇!


 

(4)「ケビンさん1周忌の集い」の開催

 ケビンさんの1周忌にあたる2012年10月1日(月)18時30分より愛生舘ビル会議室にて「1周忌の集い」を開催しました(18名参加)。

 

7月にボストンを訪問した秋山さんより銀杯の紹介及びご家族の近況等についての報告の後、道庁総務部野球部監督の三田村栄幸さんによる献杯、さらに野球部OBの皆様からはケビンさんのプレーぶりなども含め、それぞれの思い出を語っていただきました。

 


 

4.マリアさんの来道(2013年7月18日(木)~20日(土))

 

日本に多くの知人がいらっしゃるマリアさんですが、「偲ぶ会」の参加者をはじめ北海道でケビンさんがお世話になった皆様に是非お会いしお礼を伝えたいと、併せて3人の子供達にも父親の第2の故郷とも言える思い出深い北海道を見せてあげたいとの願いで今回、来道の運びとなりました。

 

2013年7月18日(木)18時30分より、東京ドームホテル札幌にて「マリアさんご家族歓迎会」を開催する予定です。道庁、スズケン㈱関係者のみならず、ケビンさんと縁のあった方々に広く、お集まり願いたく、皆様の参加をお待ちしております。

 

野球少年のエイダンくんにとっては、道庁野球部OBの方々に当時の父親のプレーとその勇姿を聞かせていただける格好の機会となることでしょう。

 

これをきっかけに将来、北海道日本ハムファイターズのホームランバッターとして、来日することを願ってやみません。